2007年3月25日(日)20:07

メルケル首相は速度を上げる:「2009年までに新EU条約を」

ベルリン(ドイツ通信社dpa)

ドイツのアンゲラ・メルケル首相(キリスト教民主同盟)は欧州連合を再び改革路線に乗せる。EUの誕生50周年を祝う記念のEU首脳会議で、加盟27ヶ国の首脳は「ベルリン宣言」を採択し、2009年までに政治運営規則に関する新たな条約を発効させることを約束した。

「失敗は歴史的怠慢となる」とEU議長を務めるメルケル首相は警告した。ベルリン宣言により、EUはほぼ二年にわたるEU憲法の危機に終止符を打った。ベルリンでは数千人が春の陽光のもと、混乱なく賑やかにEUの創立50周年を祝った。

メルケル首相は、今や4億9千万人を抱えるEUの新たな法的基盤を、ポルトガルが議長国となる2007年下半期の政府協議で承認するよう強く求めた。新たな条約は、フランスとオランダの批准否決で頓挫した当初の憲法草案同様、EUを社会的、民主的で、国際問題に即座に対応でき、市民にとって分かりやすい組織にすることを定めている。

メルケル首相は過去50年間の欧州統合の成果を称賛した。しかし平和、自由、民主主義、法治国家は自明のことではない。「すべてをあらためて強化し、守る必要がある。停止は後退にほかならない。分裂すれば、EUは幾人かの人々が考える以上に早く歩調を乱す」、と首相は警告した。ベルリン宣言の調印は、各国首脳を代表する形でメルケル首相、欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長、および欧州議会のハンスゲルト・ペッテリング議長が行なった。

メルケル首相は、フランス大統領選挙後の6月のブリュッセル首脳会議で、憲法問題解決のロードマップを発表する意向である。ロードマップは「内容的な路線転換」を含む。決定はその後各国首脳の政府協議で行なう必要がある。6月のドイツ議長国任期の終了には、「何が成立し、何がしなかったかが」明らかになろう、とメルケル首相は述べた。首相はドイツ第二放送(ZDF)の番組「ベルリン・ディレクト」Berlin direkt で、失敗せぬよう警告した。「失敗すればきわめて深刻な事態となる」。EUの新たな条約上の基盤は今後なお「厳しい協議」が必要である。私は一人ではできない。「全員の善意が必要なのだ」、とメルケル首相は訴えた。

歴史的な武器庫Zeughausの建物で行なわれた、EU創立50周年のベルリン宣言の採択と並行して、ウンターデンリンデンでは公式発表でおよそ50万人がブランデンブルク門を中心にEUの創立50周年を祝った。メルケル首相はドイツ第一放送(ARD)の番組「ベルリン便り」Bericht aus Berlinで、これは「EUに対し興味や喜びが生まれていること」を示すものだと述べた。首脳会議の反対派は約1000人で、これは主催者の予想をはるかに下回る数字であった。若者たちは晩にベルリン大聖堂で行なわれた全キリスト教のミサに参加し、メルケル首相や他の首脳会議出席者とともに数ヶ国語で祈りを捧げた。

2005年にフランスとオランダが国民投票でEU憲法批准を否決して以来、EUは新たな改革ラウンドに道を開く機構改革の代案を模索している。オランダのヤン・バルケネンデ首相は首脳会議の閉幕後、「私たちは修正条約が必要だ… 憲法の語は必要でない」とあらためて主張した。

ペッテリング欧州議会議長も、結局もはや憲法という概念を表に出す必要はない、だが実質は維持する必要がある、と述べた。土曜日に開かれた保守系の首脳同士の会合では「憲法条約」Verfassungsvertragの代わりに「基本条約」Grundvertragの語が頻繁に用いられた。

引退を控えたフランスのジャック・シラク大統領はメルケル首相に対し、「フランスは全面的にメルケル首相を支援する」と約束した。シラク大統領は昼食の際、首脳会議主席者から大きな拍手を送られた。

夫のヨアヒム・ザウアー氏とともに首脳会議出席者を出迎えたメルケル首相は、演説の中でドイツの分断とその18年前の克服に触れた。「夢が実現した」と東ドイツで育った首相は欧州統合について語った。EUはエネルギー、外交、内政、司法の分野でより良い決定をより速やかに行なう必要がある、と首相は述べた。

バローゾ欧州委員長はドイツをEUの頼りになる推進力と評した。「今日の欧州連合、すなわち私たちの拡大ヨーロッパは、ドイツの尽力や連帯なしにはありえなかっただろう。」イギリスのトニー・ブレア首相は、EUを一層効率的にするならば変革が必要だと述べた。しかし首相は一方でフランスとオランダのEU憲法否決に触れ、「それゆえ私たちは現実的になる必要がある」と主張した。

チェコのヴァーツラフ・クラウス大統領はあらためて、私は「ベルリン宣言」に関するメルケル首相の仕事には満足していないと述べた。「民主的な論争、民主的な議論が欠けている」。「このようなやり方では残念ながらやっていけない」、と大統領は批判した。しかし、チェコ政府も2009年までにEU基本条約EU-Grundlagentextを批准することについては、基本的に認めた。

メルケル首相は土曜日、ベルリンフィルハーモニーにEU各国首脳を招き、ベートーヴェンの第5交響曲*の記念演奏で祝典気分を盛り上げた。首脳会議出席者はホルスト・ケーラー大統領主催のベルビュー宮殿の晩餐に招かれた。また14の美術館が企画した「麗しの夜」という夜間開館プログラムには、およそ18,000人が訪れた。

原題:Kanzlerin drueckt aufs Tempo: Neuer EU-Vertrag bis 2009

*訳注:原文には第五交響曲 5. Symphonie とあるが、EUのいわば「国歌」に当たる第九交響曲の可能性もある。




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